『珍しい工事』、もう一つ。
東日本大震災にかかる災害復旧工事について。
今年は震災から10年目を迎え、関係する工事は急ピッチで進められています。
舞根地区では現在、西舞根川の災害復旧工事が進められています。
西舞根川は昨年9月、国内初となる災害復旧工事おける河川護岸の開削が実施され、2020年6月にさらに1か所の河川護岸の開削が行われました。
(写真は全て2020年6月に撮影したものです)
同時に、森は海の恋人が保全活動を続けている塩性湿地内に導水路を掘り、最後に開削した部分と接合されました。
西舞根川は予め土嚢で河川内を塞ぎ、川の水は開削部分から塩性湿地内へ流れ込み、一昨年設置された導水路を通って東舞根川へと流れ出て行きます。
これにより、海と森とを繋ぐ水の動線が確保されました。
塩性湿地内は塩分濃度や水温が大きく変化することが予想されていたため、事前に京都大学、東京都立大学、東京農業大学との協働で水質計等の調査機器を設置しモニタリングしています。
この塩性湿地は、1940年代は天然の干潟でしたが、国内の食糧確保のために埋め立てられて農地へと姿を変えました。
しかし、もともと干潟だったため満潮になると海水が侵入し、農地には不向きな土地とされ、次第に耕作放棄地と姿を変えました。
そして、2011年3月11日、東日本大震災時の地殻変動による地盤沈下で、1940年代と同じような状況に戻った土地になります。
津波により攪乱され、一時はアサリや多種多様な魚類の生息地となりましたが、発災後、地殻変動による地盤上昇が急激に進んだことで塩性湿地の生物多様性は低下してきました。
当初、災害復旧工事で埋め立てられそうになったこの塩性湿地ですが、何とか保全する方向へ進み、災害復旧工事の枠の中で護岸の開削が行われたことで、多様性を取り戻しつつあります。
「保護」ではなく「保全」のスタンスで、自然環境に対して順応的に手を入れ続けて行くことで生物の多様度が増し、教育や研究、観光資源としてのフィールドの活用を目指しています。
また、西舞根川流域の森づくり活動も始めました。
現在はコロナウイルス感染拡大防止のため小規模ではありますが、少しずつ森に手を入れています。
この活動はコスモ石油エコカード基金助成、『SAVE the BLUE』のご支援を受けています。
西舞根川流域全体を豊かな森とすることで、結果的に森から海までの自然環境を保護することに繋げ、自然を守ることで地域経済が潤う仕組みを作りたいと考えています。
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