目に見えない部分への配慮
舞根地区の災害復旧工事は目に見えない部分にもあります。
(工事は既に終了しています。)
その災害復旧工事の内容は、地下水の移動経路や遮断を減らすという工夫になります。
舞根湾の奥部には海辺を通る車道があります。震災で壊れて通行不能となり、災害復旧工事の対象になりました。海辺は軟弱地盤のため、約10mの矢板(鉄製の板)を途切れなく二重に打ち込みむ基礎工事(控え矢板工法)を行い、その上に車道を乗せるという工事です。
通常使用される矢板は地下水や海から浸透してくる水を遮断するものになります。しかし、舞根地区では透水性矢板(穴が開いています)を使用することになりました。地下水の移動をできるだけ妨げないようにする工夫です。地下水には豊富な栄養塩類が含まれており、牡蠣やホタテ、ワカメ等の海産物を含め沿岸部の海の生態系を支えています。地下水を遮断または移動経路を変化させないよう、海の生態系にできるだけ配慮した工事になりました。
透水性矢板は通常の矢板よりも高価であり、災害復旧工事での使用は事例がないそうですが、市、県、国と粘り強く意見交換を続けた結果、使用が認められました。多くの研究者との協働で、生物や地下水等を調べて科学的根拠として示し、舞根地区の災害復旧工事での使用が認めらることになったのです。
背景には、担当の市役所職員の方の頑張りがあったことを忘れてはいけません。
雨水の約4分の1は4分の1は地下水になると言われています。地下に潜った水は栄養塩類を含み、陸近くの海底からゆっくりと湧き出てきます。三陸沿岸の海の幸は地下水にも支えられているのです。
透水性矢板の使用は建設業界でも事例が少ないそうで、業界関係者の方々も視察にいらっしゃいました。
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