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2020年05月30日

『珍しい工事』の、その後

昨年9月、東日本大震災における災害復旧工事の一環で、被災した河川の護岸を壊すという珍しい工事が行われました。
災害復旧工事は原型復旧(被災前の状態に戻す)が原則とされていますが、被災した河川の護岸を直すのではなく、災害復旧工事として壊すという工事は国内初だそうです。
その後の進捗をご報告いたします。


下の写真向かって右側が海(舞根湾)、中央やや左下の黒ずんで見える部分が塩性湿地。

『珍しい工事』の、その後


舞根湾には「東舞根川」、「西舞根川」という2つの小さな河川(普通河川)が流れ込んでいます。
東舞根川にかかる災害復旧工事はほぼ終了し、続いて西舞根川の災害復旧工事が始まりました。
西舞根川沿いには、東日本大震災時の地殻変動(地盤沈下)で生まれた塩生湿地があり、震災直後から各研究機関と協働で保全活動を続けています。
先日から始まった西舞根川にかかる災害復旧工事は、被災した河川護岸をつくり直すことが主となります。
その際、既存のコンクリートブロック積み護岸での復旧工事ではなく、河川の生物への配慮を目的に環境配慮型護岸を導入することになりました。
東日本大震災における環境配慮型護岸での施工も、他に確認されていないことから初めての取り組みなのかもしれません。


しかし、復旧する全ての護岸に環境配慮型を使用する訳ではありません。
西舞根川の護岸の復旧工事では、既存のブロック積み護岸での復旧工事も実施せざるを得ませんでした。
護岸の表面に、多少の凹凸がある化粧パネルを設置するよう提案し、承認されました。
化粧パネルは多少の景観への配慮程度にしかならず、残念なことに生物への配慮としては極めて不十分な結果となってしまいました。

『珍しい工事』の、その後

災害復旧工事における河川護岸の復旧については、復旧予算の限度があるため安価なコンクリートブロック積み護岸が多様されがちです。
西舞根川においても、全て環境配慮型護岸を使用することはできませんでした。
震災直後から各大学との協働調査を実施し、得られたデータから、将来生物の多様性が高まることが期待できる場所を優先し、環境配慮型護岸を設置するよう行政に提案し続けた結果、約8年提案し続けてやっと承認されたのです。


現在、実施されている西舞根川右岸の災害復旧工事。
写真向かって正面が川下。

『珍しい工事』の、その後

塩性湿地沿いの河川護岸(左岸)は復旧工事はせず、既存のまま放置となります。
右岸のみ、環境配慮型護岸で施工します。
現在、工事のため川の中に土嚢を敷き詰めて水を堰き止め、ポンプアップして写真左側の湿地に水を流しています。
この後、左岸を一部開削しポンプアップせずに河川水が湿地へと流れ出る工事が行われます。
河川水は、西舞根川 ⇔ 塩性湿地 ⇔ 導水路 ⇔ 東舞根川 ⇔ 海(舞根湾)と、動線が確保されます。
工事では、河床を掘り下げて堆積した土砂を取り除き、既存の右岸の撤去も行われています。
河床に堆積していた土砂の一部は良質の川砂だったため、現在、河口付近に投入し干潟の復旧を促進できないかも模索しています。
西舞根川に掛かる災害復旧工事は今年度いっぱい続く予定です。完工後、生物たちがどのように回復していくのかを見続けて行こうと思います。


今後、森は海の恋人では西舞根川上流の森づくりを実施して参ります。
西舞根川の初めの一滴から舞根湾まで、流域全体の保全活動が始まります!!
この活動は森は海の恋人会員の皆さまに支えられ、コスモ石油エコカード基金助成を受けています。
活動のページはここをクリック!!
また、コーセー株式会社様ほか、多くの賛同者の皆様に支えられています。
改めて、心より感謝申し上げます。




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